AIが「最適解」を出しても、企業は一緒に動けない
――フィジカルインターネットで最後に残る「その判断を採用してよいのか」という問題
本日、オンザリンクス社と、「検証可能なフィジカルインターネット」構想を発表しました。
今回のプレスリリースでは技術の仕組みを紹介していますが、GhostDrift数理研究所として、この構想を考えるうえで特に重要だと感じている論点を一つ書いておきたいと思います。
それは、
AIが良い物流計画を作ることと、複数の企業がその計画を実際に採用できることは、別の問題ではないか。
ということです。

「全体最適」だけでは、企業は動けない
例えば、AIが複数企業をまたいだ非常に効率的な輸送計画を作ったとします。
全体の輸送距離が短くなり、積載率も上がり、コストも下がる。
数理的には優れた計画かもしれません。
しかし、その結果として一社だけに大きな遅延が発生するなら、その会社は参加できないかもしれません。
ある会社には納期という条件があり、別の会社にはコスト上限があり、さらに別の会社には車両や倉庫の制約がある。
つまり共同物流では、
「全体として良い計画か」だけではなく、「それぞれの企業が、その判断を採用できるか」
まで扱う必要があります。
だから、目的を一つにしない
今回発表した構想では、
目的を揃えなくていい
システムを揃えなくていい
必要以上にデータを見せ合わなくていい
という3つの原則を置いています。
企業にはそれぞれ異なる経営目的があります。
使っているTMS、WMS、ERPも違います。
運賃、原価、顧客情報、稼働状況など、他社にはそのまま見せたくない情報もあります。
それらをすべて一つに統一してから共同物流を始めようとすると、参加するためのハードルは高くなります。
そこで今回の構想では、企業そのものを揃えるのではなく、共同物流に参加するために確認すべき条件をつなぐことを考えました。
その共通条件を「Beacon」とし、各社のAIやシステムが生成する計画を「物流判断パケット」として扱い、共同実行に必要な条件を満たしているかをAIアシュアランス基盤で検証します。
詳細な業務データそのものではなく、「必要な条件が成立していること」を確認できる形で判断をつなぐという考え方です。
AI時代に必要なのは、「データの接続」の次かもしれない
これまでデジタル化では、「データをつなぐ」ことが非常に重要でした。
これからAIが企業活動の中で判断を担うようになると、その先にもう一つ問題が出てくると考えています。
異なるAIが出した判断を、企業をまたいでどう採用し、実行につなげるのか。
AI同士が通信できるだけでは足りません。
判断の意味が途中で変わっていないか。
必要な条件を満たしているか。
誰がその判断を承認できるのか。
そして、その条件が成立したときだけ実行へ進めるのか。
GhostDrift数理研究所が取り組んでいる「AIアシュアランス」は、この判断から実行までの間を検証可能にするための技術です。
フィジカルインターネットを「大きくする」だけでなく、「検証可能なまま大きくする」
今回、構想を具体化する過程で関連技術4件を国内特許出願しました。
またGhostDrift数理研究所では、フィジカルインターネットが参加企業を増やしていく際にも検証可能性を維持するための構造条件を、Lean 4を用いて形式化した「Physical Internet Verified Scalability」を公開しています。
ここで重要なのは、特定の一つの技術だけを正解にすることではありません。
むしろ、
異なる企業が、異なる目的・システム・データを持ったまま参加しても、共同実行の判断を検証できること。
その構造をどう作るかが、AI時代の物流ネットワークを考えるうえで大きなテーマになるのではないかと思っています。
フィジカルインターネットが目指すのが「物流資源をつなぐ世界」だとすれば、その次には、
企業と企業の「判断」をどうつなぐのか。
という問題がある。
今回の構想は、その問いに対する一つのアプローチです。
今後、実際の物流現場を想定した検証を進めていきます。
▼今回のプレスリリース
▼Physical Internet Verified Scalability



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