top of page
検索

製薬業界の申請解析における「再現性の壁」をADICで突く — 臨床申請解析 証跡デモをリリースしました

TL;DR

  • 申請解析に使われた条件・実装・変更履歴を固定し、審査照会・監査・再現要求に「その場で出せる」状態を作る実装基盤 ADIC の、製薬向けデモをリリースしました

  • デモはブラウザで完結します。データ送信なし、インストール不要

  • 「整合確認」と「変更検知(自動停止)」の2シナリオを体験できます



製薬業界で今、何が起きているか

AI・機械学習が臨床開発に入ってきた結果、製薬企業の統計・薬事担当者は新しい種類の問題に直面しています。

精度の問題ではありません。記録の問題です。

実際に起きている3つの場面

場面1:申請後の再実行要求

NDA/BLA申請後、審査担当者から「同じ解析を再実行して結果を確認させてほしい」と連絡が来る。ここで担当者が直面するのは次の問いです。

  • 申請時に使っていたモデルのバージョンはどれか

  • そのバージョンのコードは今も同じ状態で保存されているか

  • 乱数シードは固定されていたか

  • 依存ライブラリのバージョンは記録されているか

これらが揃っていなければ、「再実行できます」と言えません。

場面2:試験期間中のモデル更新の発覚

申請後の内部監査で、試験期間中にAIモデルが更新されていたことが判明する。変更管理委員会の承認記録はない。

問題はどこにあるか。モデル更新自体ではありません。どの解析がそのモデル版で行われたかを特定できないことです。影響範囲が不明なまま申請書類が存在することになります。

場面3:SAP一致の照会

審査担当者から「統計解析計画書(SAP)に記載された解析方法と、実際の実装が一致しているか確認させてほしい」と照会が来る。

SAPとコードを突き合わせ、差異がないことを示す資料を準備する。これが記録ゼロの状態から始まると、数週間かかります。

なぜ既存のアプローチでは対応しにくいのか

従来のコンピュータ化システムバリデーション(CSV)は、ルールベースのシステムを前提として設計されています。「このボタンを押したらこの処理が行われる」という確定的な動作を検証する枠組みです。

AIモデルは違います。

  • 入力データの分布が変われば挙動が変わる可能性がある

  • コードが変わらなくても、重みが変われば出力が変わる

  • 再現性はコードの同一性ではなく、実行条件の完全な固定によって担保される

既存のCSV手順をそのままAIに適用すると、「バリデーション済み」のはずのシステムが、申請段階で再現性の証拠を出せないという状況になります。

ADICのアプローチ

ADIC(Analytically Derived Interval Computation Integrity Certificates)は、この問題に対してシンプルな答えを出しています。

解析実行のたびに、3点セットを固定する。

成果物

何を記録するか

どの場面で使うか

SAP対応表

SAP記載の各項目と実装の対応を照合可能な形で記録

審査担当者への照会対応

実行ログ

モデルハッシュ・乱数シード・ライブラリ版・入力データハッシュ

再実行可能性の証明

環境仕様書

第三者が同一条件で再現するための手順書

独立統計レビュー・申請パッケージ

そして、これら3点を内部で照合する検証器が走ります。検証器は2つの結果のどちらかを返します。

整合確認済  ── 3点が一致。同一条件での再実行が可能な状態
差異検出   ── モデル版の不一致または未承認変更を検出。解析を自動停止

「差異検出 — 自動停止」の側が、より重要です。

SAP逸脱のまま申請資料に混入することを防ぐ。問題が発覚するタイミングが「申請後の審査照会」や「査察」ではなく、「解析実行時」になります。変更管理の記録漏れを、承認前の段階で検知できます。

デモで体験できること

デモでは2つのシナリオを切り替えられます。

シナリオ1:整合確認(変更なし)

SAP一致・モデル版固定済み・再現可能な状態を確認します。

生成されるのは、実際に審査照会・監査対応で提示できる形式の3点セットです。各タブに「この書類をどの場面で使うか」が明記されています。

シナリオ2:変更検知(差異あり)

試験期間中にモデル版が変更されていた状況を再現します。

台帳に記録されたモデルハッシュと実行時のモデルハッシュが一致しないことを検知し、解析が自動停止します。変更管理委員会の承認記録がないことも同時に検出されます。

この停止ログが、遡及影響範囲の調査起点になります。

技術的な背景

ADICの数学的な基盤は、次のプレプリントで公開されています。

Maeki, H. (2026). Deterministic Replay Verification of Interval Programs over a Finite Primitive Core via Quantifier-Free Integer Certificates. Zenodo.https://zenodo.org/records/18897322

コアとなる主張は、固定されたプリミティブ集合 {+, −, ×, inv, sqrt, relu} に対して、検証器の受理が具体的な軌跡の存在と全仕様制約の包含を含意すること、そして検証コストが台帳サイズに対して線形(O((n + s) · C(b)))であることです。

ソルバーによる探索は行いません。実現された台帳に対する決定論的なリプレイです。

コアの補題のLean形式証明は ghostdrifttheory.github.io/adic-lean-proof で公開しています。

何ではないか

明示しておきます。

  • ADICはXAIではありません。 モデルの判断根拠を可視化するものではありません

  • ADICは規制判断を代替しません。 審査・承認の結論を出すものではありません

  • ADICは精度を上げません。 解析の正確さに関与しません

ADICは「その解析が、どの条件で、誰の承認のもとで、どのように記録されたか」を固定する基盤です。精度は前提。記録の構造が実用化の条件です。

リンク

製薬AIの実用化で詰まっている方、薬事・統計・QA担当でAI変更管理の設計を考えている方に届けば幸いです。

GhostDrift Mathematical Institute


 
 
 

コメント


bottom of page