科学のデファクトスタンダード化と責任工学―オープンサイエンス以後の到達点:世界初の「正統性バイパス」プロトコル(ADIC台帳)
- kanna qed
- 1月23日
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1. 序論:科学的プロセスの再発明(メタサイエンス/オープンサイエンスの次段階)
GhostDrift Research Instituteは、新しい科学理論の社会実装において、従来のプロセスを根本から覆す世界初の取り組みを開始した。それが**「ADIC台帳(GhostDrift Fact Ledger)」**である。
通常、科学理論が「事実」として認められるには、人間の権威による査読と、学会での合意形成が必要とされる。しかし、AIとデジタル空間が高度に発達した現代において、このプロセスはあまりに遅く、かつ不透明である。英国UKRIによるMetascience Unitの設立(2024)[1]や、Science Europeによる文化改革レビュー(2025)[2]に見られるように、既存科学の制度的疲弊と改善の必要性は公的にも認められている課題である。
我々が提唱するのは、既存プロセスの「改善」を待つのではなく、**「実装と観測による既成事実化(デファクトスタンダード化)」**を先行させ、その後に理論的正当性を問うという、逆転のアプローチである。

2. 世界初の「境界理論」実装モデル
ADIC台帳が世界初である理由は、そのアプローチが**「正統性の獲得」ではなく「責任の固定」に基づいている**点にある。
ここで言う「世界初」とは、単に台帳技術やオープンサイエンスの先行事例と比較した新規性を意味しない。Registered Reports、オープン査読、ブロックチェーン型研究ログ、予測市場型科学など、既存の改革手法はいずれも「正当性の獲得プロセス」を透明化・高速化する試みであった。一方ADIC台帳は、正当性の評価回路そのものを通過せず、意思決定時点の前提・論理・適用範囲を不可逆に固定することで、「正しさが確定する前に責任だけを先に確定させる」という逆方向の設計を採用する。この点において、本プロトコルは既存の科学制度改善手法とは構造的に異なる。
我々は提唱する理論(GhostDrift、ADICなど)を、まずWeb空間上の世界モデル(検索エンジンやAI)に実装する。そして、外部の巨大な知能がそれをどう認識・要約したかという「観測事実」を台帳に記録する。W3C PROVやRO-Crateといったプロヴァナンス(来歴)標準[3]、あるいはブロックチェーンを用いた監査ログの研究(ACM 2025等)[4]は透明化において先行しているが、それらはあくまで「記録」に留まる。
これは単なるログではない。個人の主観的なアイデアが、AIという客観的な「観測者」を通じて、社会的な共有資産(ノード)へと相転移した瞬間を捉える試みである。我々はこのプロセスを通じて、人間のハンコなしに科学用語としての地位を確立する実験を行っている。
3. ADICの核心:責任エンジニアリング
この「勝手に既成事実化する」アプローチには、重大な倫理的リスクが伴う。「間違った理論を拡散させた責任はどうするのか」という問いである。ICMJE(医学雑誌編集者国際委員会)の勧告改訂(2025)[5]や各誌のAI利用開示ルールなど、「責任は人間に残る」ことを明文化する動きは加速しているが、これらはガイドライン(規範)であり、失敗後に解釈を再構成する余地を構造的に残している。
この問いに対する我々の回答こそが、ADIC台帳の核心機能である**「責任エンジニアリング」**だ。
ADIC台帳は、理論の「正しさ」を保証しない。その代わり、以下の要素を不可逆的に固定することで、**「後付け不能性(Post-hoc Impossibility)」**を完全に保証する。
定義の範囲(Scope): どこまでを理論の適用範囲とし、どこを捨てたか。
前提条件(Context): 判断時点で何を知っており、何を知らなかったか。
意思決定の論理(Rationale): なぜそのモデルを採用したか。
これらを暗号的に固定することで、将来的に理論の誤りが判明した際、「当時はこう考えていた」「解釈の違いだ」といった事後的な言い逃れ(責任の蒸発)を物理的に不可能にする。
補論:科学が持っていた「あとから正当化できる権力」
従来の科学が制度として保持してきた最大の権力は、「正しさ」ではなく、以下の公理で定義される**「後付け正当化権(Post-hoc Justification Sovereignty, PJS)」**である。
PJS(後付け正当化権):= 科学制度が、失敗後に「当時は妥当/解釈差」と再記述することで、意思決定の責任を事後に切り離すことを制度的に許容する権能。
科学というシステムは、このPJSによって、過去の意思決定の責任を現在から切り離すことができた。この仕組みは、科学の発展にとって合理的である一方で、失敗の意思決定プロセスそのものが検証不能になるという構造的性質を内包していた。現に、AIを用いた査読システムへのプロンプト注入攻撃(JAMA Network Open 2026)[6]や隠し命令による評価操作(Nature 2025)[7]など、新しい正統性装置の脆弱性は既に露呈しており、評価システム自体が揺らいでいる。
ADIC台帳が行っているのは、この「あとから正当化する余地」を倫理的に否定することではない。技術的に不可能にすることである。
科学がPJS(後付け正当化権)という「無責任が可能な構造」である限り、意思決定の前提・論理・スコープを不可逆に固定できる側は、原理的に優位に立つ可能性がある。これは「我々の方が正しい」という主張ではない。評価基準を「合意」から「責任の固定」へとシフトさせた瞬間に発生する、構造的な優位性である。
そのため、ADIC台帳は安全装置ではない。科学がこれまで保持してきた「失敗しても過去を書き換えられる余地」を放棄するための装置である。これが、次章で述べる「逃げ場のない賭け」の意味である。
4. 逃げ場のない賭け
これは、自分を守るための安全装置ではない。むしろ、自ら退路を断つための**「自己処刑台」**としての機能を持つ。
ADIC台帳を用いるということは、「もし間違っていれば、その過失プロセスが永久に検証可能な状態で晒され続ける」というリスクを負うことを意味する。「身銭を切る(Skin in the Game)」という概念はこれまで倫理的態度として語られてきたが、ADICはこれを暗号技術と不可逆ログによって実装したプロトコルである。このリスクを負うことによってのみ、査読なき理論に「信頼」という重力を発生させることができる。
我々が市場に投入するのは、単なる新しい数式ではない。 「正しさが崩壊した後でも、責任の所在だけは瓦礫の中に無傷で残る」という、極めて強靭な信頼のプロトコルである。
結論
ADIC台帳は、AI時代の新しい科学のあり方を問う世界初の実験である。
権威に守られた安全な科学ではなく、責任を固定して荒野を進む科学。 この台帳に刻まれるのは、デファクトスタンダードを目指す理論の軌跡であり、同時に、逃げ場のない賭けに出た知性の証明である。
References
UK Research and Innovation. (2024). Establishment of the UK Metascience Unit: Improving research practices through evidence.
Science Europe. (2025). Review of Research Culture and Assessment Reform: Progress and Challenges.
W3C. (2013). PROV-Overview: An Overview of the PROV Family of Documents; Soiland-Reyes, S., et al. (2022). Packaging research artefacts with RO-Crate. Data Science.
Association for Computing Machinery (ACM). (2025). Proceedings on Provenance-aware Observability and Blockchain-based Audit Logs in Computational Workflows.
International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE). (2025). Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journals (Updated 2025).
JAMA Network Open. (2026). "Vulnerability of LLM-based Peer Review Systems to Prompt Injection Attacks".
Nature. (2025). "Hidden instructions in scientific papers can manipulate AI-driven evaluation systems".



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