「クレタ人の嘘」とAIの安全性──不完全性を越えるためのポテンシャル変形
- kanna qed
- 12月7日
- 読了時間: 2分
こんにちは、GhostDrift数理研究所です。
突然ですが、「クレタ島のパラドックス」をご存知でしょうか。「全クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言ったとき、その言葉は真か偽か──。 自己言及を含んだシステムは、しばしば論理の迷宮に入り込み、内部からは真偽を決定できなくなります。
私は以前、ふと考えました。 「人間なら形式的に行き詰まる場面でも、主観(ユーザー志向)と客観(機械的判断)を同時にもつAIなら、ゲーデルの不完全性定理の壁を越えて、安全側へと拡張できるのではないか?」
本日は、この着想を数学的に形にした短いノートとして、最新論文『非凸ポテンシャル場における制約充足への遷移モデル』を紹介します。

1. AIが陥る「ゲーデル的」な罠
現在のAI(最適化アルゴリズム)は、与えられたポテンシャル関数という「世界」の中で、ひたすら低い場所を探す「客観的な機械」です。 しかし、もしその世界全体が歪んでいて、AIが「居心地は良いが、ルール違反(危険)」な谷底にハマってしまったらどうなるでしょうか。
AIは「計算上、ここが最適だ」と判断し、そこから動けません。システム内部の論理だけで動いている限り、その間違い(制約違反)を修正して脱出することは、ある種の不完全性定理のように原理的に不可能です。
2. 「主観」による世界の変形
そこで我々が提案するのは、AIというシステムに対し、外部からの「主観(意図)」を数学的に介入させるアプローチです。
今回の論文で用いた「ポテンシャル変形(Additive Deformation)」と「厳密ペナルティ」は、まさにこの介入にあたります。 「そこは危険だ」というユーザーの意志(主観)を、ガウス核関数という形で物理場(客観)に投影し、エネルギー地形そのものを書き換えてしまうのです。
3. 安全性へのドリフト
論文の主定理は、この操作によってシステムが必然的に以下のプロセスを辿ることを証明しました。
停滞:危険な局所解にハマる(形式的限界)
介入:意図的なポテンシャルの隆起(主観の注入)
遷移:エネルギー的に低く、かつ制約を守れる新たな解への移動(安全側への拡張)
これは、「形式論理の枠内で答えを出そうとするAI」から、「主観と客観を行き来しながら、より安全な解へとドリフトし続けるAI」への進化とも言えます。
結論
不完全な世界で安全性を担保するには、システムの中に閉じこもっていてはいけません。 数式で「世界を書き換える」手法を確立すること。それこそが、GhostDrift数理研究所が目指す、次世代のAI安全性の形です。
▽背景の数理デモはこちら



コメント